【東京新聞】 先進ドイツから 脱原発の英知 在独30年の通訳士 高田さん

今夏、ドイツ緑の党国会議員のベーベル・ヘーンさんの通訳として日本全国各地(東京・福島・京都・滋賀・福井・広島など)に同行・活躍された高田さんの記事が東京新聞に掲載されました。


(写真:ドイツ緑の党国会議員ベーベル・ヘーンさんの京都での歓迎会でスピーチされる高田さん。手前は関西学院大学准教授で「緑」の京都・準備会〔兼「緑の党」〕共同代表・長谷川羽衣子さんのお連れ合いの朴秀俊さん。2011年8月1日@おおた屋)

 高田さんからの次の指摘が日本の「緑の党」にとっての課題も明らかにしています。

「3・11を経て、日本でも自治体がエネルギーの自立を目指し始めている。ドイツの具体的なモデルを紹介し、実現を後押しすることがこれからの活動の軸だ。今夏は、ドイツ緑の党幹部と日本の自治体の首長らを引き合わせた。

 「国政はなかなか変えられない。市民が動き、地域から変えていくことが現実的で大切なんだと思う」。生活の根幹であるエネルギーを地域に取り戻すことは、市民の手に民主主義を取り戻すことでもある。

 議会の外で市民がものを言い、主権者として変革の力を生み出した三十年前のドイツが、官邸前に群衆が集う今の日本に重なる。硬直化した社会の仕組みを変えるチャンスが目の前にある」

  
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東京新聞より

【社会】先進ドイツから 脱原発の英知 在独30年の通訳士 高田さん
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012082190070643.html

2012年8月21日 07時06分


「さよなら原発!」と書かれたオリジナルバッグを手にする高田知行さん(右)と次男健さん=東京都千代田区内幸町の東京電力本店前で(木口慎子撮影)

 在独三十年のプロの通訳士として、政府や経済界要人の言葉を伝えてきた高田知行さん(52)=東京都出身=は今、脱原発の活動家として日独を行き来する。再生可能エネルギー導入の経験。自然や暮らしを大切にする価値観。ドイツから祖国に伝えたいことは、たくさんある。 (小嶋麻友美

 一九八〇年代初頭、大学院を休学して留学した西ドイツ(当時)は、戦後の経済成長や効率主義を問い直し、別の生き方や価値観を求める「オルタナティブ」運動の真っただ中にあった。原発やミサイル配備に反対する若者がデモに集まり、足もとから暮らしを変え、政治を動かしていた。

 大学院卒業後、デュッセルドルフに定住し、妻と三人の子どもに恵まれた。一方、離れるほど日本の風土や文化への思いも強くなった。通訳、翻訳業のかたわら、日本のしょうゆやみりんを広める活動にも携わる。

 東京電力福島第一原発事故に、故郷の危機を感じた。「今、原発を止めなければ、日本のすべてが失われてしまう」

 ドイツで市民団体「アトムフリー・ヤーパン」を立ち上げ、中部電力浜岡原発の停止を求める約六百人の署名を静岡県庁に届けた。

 連邦制で各州の独立性が高いドイツ。地域分散型の政治、社会体制はエネルギーにも及び、自治体や市民が取り組む風力、太陽光などの再生可能エネルギーは昨年、全発電量の約二割を占めた。

 対して日本は戦後、中央集権体制の下に力や富を一極集中させ、経済成長一辺倒に走ったように見える。仕事で来日するたび、自然が失われ、都市も地方も画一化が進む光景にゆがみを感じていた。「原発事故の前から日本は壊れていた」

 3・11を経て、日本でも自治体がエネルギーの自立を目指し始めている。ドイツの具体的なモデルを紹介し、実現を後押しすることがこれからの活動の軸だ。今夏は、ドイツ緑の党幹部と日本の自治体の首長らを引き合わせた。

 「国政はなかなか変えられない。市民が動き、地域から変えていくことが現実的で大切なんだと思う」。生活の根幹であるエネルギーを地域に取り戻すことは、市民の手に民主主義を取り戻すことでもある。

 議会の外で市民がものを言い、主権者として変革の力を生み出した三十年前のドイツが、官邸前に群衆が集う今の日本に重なる。硬直化した社会の仕組みを変えるチャンスが目の前にある。

 「目指すのは脱原発のエネルギーだけではない。命を尊重し、毎日を大切に生きること。欧州のモデルを表面的に取り入れるだけでなく、僕らが内側から変えられるかどうかなんです」

東京新聞